会社概要
ゲン - ショウ・シャ【現象・舎】
人間が知覚することのできるすべての物事。
自然と人工の節制の融和が生み出す本質が外的に発現したもの・または集まり。
合同会社現象舎という社名には、私たちの事業姿勢を込めています。
「現象」とは、物事の背後にある本質や理念を適切に浮かび上がらせ、誰にでも伝わるかたちで表現すること。その過程で、見過ごされていた価値や魅力が明らかになります。
「舎」には、人が集い、共に学び合い、新しいつながりを育む場という意味を託しました。
ブランディングや企画を軸とする私たちの仕事は、単なる情報発信にとどまらず、本質を可視化し、人と人、人と地域が交わるきっかけをつくることです。
名の通り、現象舎は真理を映し出し、その光に惹かれて人が集まる場であり続けたいと考えています。
会社概要
会社名 | 合同会社 現象舎 |
代表社員 | 西田 優花 |
本社所在地 | 〒699-2501 島根県大田市温泉津町温泉津ロ160 |
事業内容 |
・ブランディング事業 |
法人設立 |
令和2年5月6日 |
資本金 |
5万円 |
従業員数 | 5名(令和7年9月現在・アルバイト含) |
温泉津について
私は2021年に温泉津に移住しました。
初めてこの町に立ったとき、入江に抱かれた地形のせいか、海が荒れるという感覚がほとんどないことに驚きました。
潮騒はあるのに、ときに水面は湖のように静かで、ただ波が呼吸するように寄せては返すばかり。
その穏やかさの中に、湯の香りが立ちのぼり、路地を曲がると古い瓦屋根や木の格子が続いていく。その光景に、私は一瞬で「ここで暮らすかもしれない」と思ったのです。
翌年2022年には「本と喫茶のゲンショウシャ」を始めました。
当時、温泉津は少しずつ変化のときを迎えていました。
長く町を支えてきた旅館が減り、代わってゲストハウスが生まれ、外からやってくる人の姿は少しずつ増えていた。
けれども一方で、気軽に食事ができる場所は限られていて、「ごはん屋さん難民」となってしまう人も少なくなかった。だからゲンショウシャは、暮らしと旅のあいだをつなぐ食卓のようにして、この町に置かれました。
スパイスカレーや野草茶を用意し、夜まで開けて灯りをともすことで、旅人も地元の人も肩を並べて過ごせる場所になればと願いました。
この町は2007年、石見銀山とともに世界遺産に登録されました。
けれど、その歴史を紐解けば「世界遺産」という額縁に収まらないほどの広がりがあります。
16世紀、李氏朝鮮から伝わった技術によって銀の産出が飛躍的に増え、温泉津湊からは銀が国内外へと積み出されました。
明やポルトガルに限らず、さまざまな国や地域の船が訪れ、日本の各地ともつながっていった。
石州銀は世界経済の歯車を回し、この小さな港を世界の結節点へと押し上げたのです。
私はときに、港に立ち海風を受けながら思うのです――外からやってくるものを受け入れ、それを自らの糧に変えてきたその歴史が、この町に暮らす人々のDNAに息づいているのではないか、と。
だからこそ、私のようなよそ者も受け入れられ、この町に根を張ることを許されているのかもしれません。
ただ、それは勝手に受け入れてもらえたという話ではありません。
この地に代々住み、湯を守り、祭を支え、路地を掃き、家々を継いできた先人たちの営みがあったからこそ、今の温泉津がある。
その積み重ねに私は深い敬意を抱いています。
だからこそ、この町でなにかを始めるときは「自分が何をもたらせるか」ではなく「この町に生かされている」という感覚が先に立ちます。
2024年には「本と舍」を立ち上げました。
本と人がめぐりあう家として、縁側でふらりと腰かけ、本を開き、ひと息つけるような場です。やがてそれが町の日常に溶け込み、気づけば風景の一部になっている。
そんな未来を夢見ています。
100年度も湧き続ける温泉津であるために。
私はこの町のただなかで暮らし、湯気と潮騒と人の声に包まれながら、これからも語り続けたいと思います。
西田 優花